なぎたその音楽と戯言

音を楽しむ、言で戯れる

鴇浅葱

 

 

 

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君の話は、中身がなくて敵わなくて

時がゆっくり過ぎる感覚に溺れて、

無駄を過ごす時間が愛おしかった。

君と居ると、秒進分歩早く去っていった。

早足で牛蒡抜きした速度は、私には速すぎた。

 

「どちらが合っていた」泡みたいな質問は、

結局合わなかった。たかがそれだけのこと。

後悔を今更公開されても、私は非公開に。

遅いの、鈍いの、間抜けな顔したあなたが、

私は、本当に、好きだった場所だった

場所が、今は嫌いになってしまった。

 

日に火に油を注いだあなたに、急いで

私は、涙で消化した日々を過ごしていた。

もう得られなくなった癒しが寂し哀しに、

最期には、私だけが残って、詩が残って、

死に繋がると、 手を繋がなくなった日に、

ロウソクがじとり溶けていくのを感じたんだ。

 

話して。言葉にして。できないなら傍に居て。

何でもいいから感情を伝えて欲しかった。

変わってほしくないところが変わって、

変わってほしいところが変わらなかった。

歩み寄るのは、相手の気持ちを考えるのは、

恋の意味だと学んだことを全否定した数年だ。

 

君の姿は、私の目に写ると魔法みたいだった。

どう言う訳か、冴えない男が愛おしい男になり、

普通の服が高級に、ダサい髪を撫でたくなった。

謎は解明されないまま、期間は過ぎていき、

消耗品だったと気付いた試供品は捨ててしまった。

私には合わない、会わないのに合うはずがない。

 

「どっちでも」の口癖の君は、どっちつかずで、

「どうでもいい」で話は強制終了するパソコンか。

何度も何度も、正しい手順で終わらない君は、

変わらないよ。また、繰り返し壊すんだろうな。

年期が入った、手に触れるそれが羨ましい限りだ。

別れ際に、喫茶店の水でもかけとけばな。なんて。

 

目に水を溜めて枯れた私は、目薬を点した。

ほら、泣いてる。わんわん泣いてる。犬じゃない。

そんなに可愛くないし、懐こうとしたら主人が、

冷たくするんだ。不利すぎるフリスビーだな。

気に入られることよりも気に食われるとは、

身に覚えないし、代わりができたんだろうか。

 

介して。対にして。できないならさようなら。

馬鹿でもいいから人として見られたかった。

触ってほしくないところを触って、

黙ってほしいところを話してしまう君だから。

折り紙の端と端を揃えられない子供みたい、

箸を揃えて食べるご飯を、いつも待っていた。

 

好きにして、好きだけど、そうじゃなくて、

もうこれで自由だよ。お互い見えない場所で、

海を泳いでも、空を飛んでも、好きにして。 

私は、そうだな。空を飛ぼうかな。羽を広げ、

澄み切った特別な青空に、真っ直ぐな鳥に。

 

今から入れる保険はありますか。どうかな。

手厚い補償はありますか。どうしようかな。

見積もりを出したら、いくら返ってきますか。

君にあげたプレゼント、君に見せたワンピース、

君の口に触れたリップ、君に捧げたわたし。

金額よりも、時間と気持ちを返してほしいよ。

帰ってこないのに、返さないだろうね。

 

私は言った。代わってあなたは言わなかった。

それでも言葉にならないあなたの言葉を、

必死で受け取った私の過ちとやらは、

受け取り違ったというんだろうか。

難問だ。何者だ。いや、曲者だ。捻くれだ。

虚構の事実は、真実は君しかわからないまま。

 

私は変わった。あなたは変わらなかった。

子供のままのあなたは可愛かった。でも、

転換期と倦怠期が重なって、丁度運悪くに、

別の世界を見たいと思った。残念ながら、

連れて行ってくれる人が現れてしまった。

 

運とタイミングと、少しのスパイスが、

君には、まだ。まだ、足りなかった。

いつか、後悔させて。君は、あなたは、

本当は、強くて格好良い人だから。

私は知ってるよ、知っていたんだから。

だから、別れた。

 

 

 

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