なぎたその音楽と戯言

音を楽しむ、言で戯れる

聴色

 

 

 

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他愛ない対話をしたっけな。

君の話は、長くなるからさ。

途中の大事な告白が抜け落ちるんだ。

拾ってやってもすぐ捨てる癖だ。

何度同じことをしたのかな。

飽きないループは、続いていったな。

 

君の好きな音楽を好きになった。

いや、遅かったか、お粗末様だな。

プレイリストを自分に作った。

幸せの後に、失恋ソングを置く癖だ。

飛ばすのは、決まってそれから。

直ってない。しばらく治らないかな。

 

もう許されて良い頃だ。

もう終わった頃合いだ。

積まれた罪は浄化したか?

あの頃から変われてるかな。

あの頃からかわれてるかな。

摘まれた花は、逆さに枯れた。

 

君の居ない日々に慣れて、

音楽のある暮らしに浸った。

ひたすら浸ったのは、君のせい。

思い出と想いは、捨てたけど、

唯一残したのはこの音楽だけ。

罪悪感が小さい、私のせいだよ。

 

別の界隈で生きた会話をして、

山の張り合いをしていたあの頃、

意見と干渉の見境が無かった。

ジャンルは違うし、好みも違う。

この身を守り合ったふたりは、

再生と破壊を繰り返していた。

 

イヤホンが絡まった関係。

あの時間が優しく、でも焦ったな。

今は目には見えない線になった。

空気を読むのは難しいけど、

シャッフルはどんな時も気が利くな。

どんな薬よりも、効いたな。ああ。

 

もう許されて良い頃だ。

もう終わった頃、愛だ。

詰まれた謎は解決したか?

あの頃から変われてるかな。

あの頃からかわれてるかな。

つまらない毎日を、送っている。

 

君の居ない街は、静寂を置いて、

音楽だけを残した後悔が残った。

「泣きたい」と期待して、泣いた私。

忘れられないのは、誰のせい?

唯一残したのはこの音楽だけ。

曲のせいでもない、君のせいにするね。

 

「悪いのは自分だ。」

と、私は言った。君に掛けずに。

「悪いのは社会だ。」

と、君は言った。私は聞かずに。

 

手軽に聴けるようになった音楽に、

価値は少なくなったように感じた。

右向いた三角を押せば流れて、

縦向いたイコールを押せば止まる。

簡単に流すなよ、思い出を流すなよ。

聴けないように、もっと複雑なんだよ。

 

4分に満たない3分ちょっとに、

意味と馬鹿と愛撫を込めて、

興奮に満たない当分ちょっとは、

ひとりよがりに探すだろうけれど。

 

もう許されて良い頃だ。

もう終わった頃合いだ。

「妻になる夢は叶いそうか?」

あの頃から変われてるかな。

あの頃からかわれてるかな。

躓いた私は、溜息を吐いた。

 

本当に聞きたかったのは、

君の「音楽」だ。それだけだ。

今日も耳に流れる旋律は、

君の音楽だ。それだけなんだ。

ただ、好きな音楽が聴けなくなった。