なぎたその音楽と戯言

音を楽しむ、言で戯れる

空の夏に白線を

 

 

 

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jacket photo. ichika

 

 

 

あの日から 何も変わっていない

排水溝の臭い 汚れた鏡に映る自分

電信柱が 立ち並ぶ街に 待つ一人

斜めに見る世界は 歪んでいて正しい

 

白線の内側に 電車の風が吹き抜ける

忘れられない 駅のホームで軽くキス

「帰したくない」とだけ 手から抜けた

栞が水に濡れた時に 夏を知らせた

 

今日は

見えなくなった 君の影に

僕の心が 落ちていった日だ

君が居ないのなら

僕に夏は来ないのなら

青空に線を引く

 

あの日から 何も変わっていない 

アスファルトの匂い ひとり踊る陽炎さん

''止まれ'' の文字が 赤く赤く燃えている

過敏に見える世界は 触れちゃいけない

 

スイセンの花弁に 意味を透かす

忘れられない わたがしを齧った 君の横顔

空に咲いた花に 敵わない

浴衣の君が靡いた時に 夏を知らせた

 

今日は

見えなくなった 君の街に

僕の気持ちが 朽ちていった日だ

愛は暮れないのなら

僕に次は来ないのなら

夜空に線を引く

 

忘れられないのは 僕だけだから

ひとり 詩を描いている

0か1かの 僕の思い出は

君に届かなかった こんな詩は

言葉と共に 暑い夏に溶けて流れていく

 

今日は

見えなくなった 僕の想いに

君の心が 遠ざかっていった日だ

僕が冴えないのなら

君に僕は似合わないのなら

夏空に線を引く

 

あの日から 何も変わっていない

空に 君との夏に 白い線を引く